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近江:箕作山

箕作山(373m、東近江市)の日溜まりハイキング。天狗・太郎坊が守護する阿賀神社(通称・太郎坊宮)、そして石仏、磐座祭祀の地である十三仏、紅滓山を巡った。

登山日
2007年1月14日日曜日
ルート
太郎坊宮前駅-阿賀神社(太郎坊宮)-箕作山-十三仏-紅滓山-舟岡山

阿賀神社(太郎坊宮)

近江鉄道・市辺駅の西、国道421号線(八風街道)沿いに、目的地と同じ名称の「阿賀神社」がある。鳥居前の駐車場に自動車を置き、電車で太郎坊宮前駅に向かった。

写真1

電車を降りて太郎坊宮の参道を歩く。周辺は田園地帯。左手・遠方には、帰路に立ち寄る紅滓山が見える。

やがて、箕作山南端の岩峰・太郎坊山が高く聳え立ち、その中腹に阿賀神社の施設を見て取れるようになる。とりわけ、近代的な参集殿がバランスを欠くほどに大きい。(写真1)

階段を上れば成願寺。薬師如来坐像の説明書には、「もと山上奥の院の本尊であった木造太郎坊大権現が、宝暦年間に当本堂に移されて」いるとある。

写真2写真3

ここから急な階段を登るが、どこにも「太郎坊宮」とあり、正式名称の「阿賀神社」は目立たない。

参集殿を右に見ると参道が二分する。そのまま表参道を登れば、手水舎、小さな愛宕社(写真2)などの施設、巨岩の隙間を行く夫婦岩、そして天忍穂耳尊を祭る本殿前に着いた。

本殿は岩壁に貼り付くように設けられているが、前庭は意外と広く、蒲生野を一望できる良いところ。

参詣して裏参道を下ると、昭和57年建立の一願成就院に天狗面を見る。その裏の願かけ道には、天狗と役行者の石像が奉納されており、修験道の場であったことが知れる。さらに、終点には紫微社の小祠が置かれているが、こちらは道教の神様らしい。

絵馬堂にも天狗面(写真4)が奉納されており、並べられた初詣の土産物も天狗だった。

太郎坊山(赤神山)

写真4

手水舎に戻り、ここから山道に入る。立て看板には、「この赤神山(太郎坊山)は神体山信仰のお山です。山頂へ登山される方は北側の頂へお上りくださるよう御配慮ください。太郎坊宮社務所」と控え目に書かれてある。

やがて赤神山の標識があり、露岩の山頂に乗れば大展望である。鈴鹿の山々が雪で白い。問題の南側の山頂は木々に覆われており、様子を伺えなかった。(写真4)

十三仏

要所に標識が立つ山道を歩く。稜線上の箕作山、小脇山ともに展望は良くないが、日射しがあって暖かい。十三仏へ下る途中で、「岩戸山」の標識に従って道を離れると、突然に磐座が現れる。(写真5)

写真5写真6写真7

あらかじめ承知していたが、紅白の布が巻かれた磐座にはドキリとさせられる。何物かと背後に回り込めば、幾何学的な線刻が施されているが、布に覆われており全体が解らない。

十三仏には岩壁が並び、その前に多数の石仏が置かれている。聖徳太子が岩に仏像を刻んだものだというが、どれだか判然としない。

岩壁の前に並んだ石仏は、どれも比較的新しい印象を受ける。聖徳太子や二宮金次郎(首無し!)も混じり、花が供えられていた。

建物の間を通り抜けて背後の岩壁を見上げると、その上には大岩(写真6)が乗っている。この地の磐座祭祀の中心だろうか。直下から見上げると今にも落ちて来るように見え、付近には神名を刻んだ石柱が並ぶ。

岩戸大神、岩戸天神、岩戸神明、宇宙不動大明神、天狗、姫山神、岩稲荷、草神、高神 ...

この汎神的な雰囲気はなんだろう。太郎坊宮の夫婦岩に「近江高天原」と書かれていたのを思い出すが、そちらの方面ではない。

十三仏からは石段の参道を下る。両側には、四国八十八カ所の数字が刻まれた石仏、地蔵、弘法大師、神名が刻まれた石柱などが並び、随所に紅白の布である。

石仏は、釈迦、阿弥陀、薬師、大日、観音、地蔵、不動、虚空蔵 ...

また、石柱にある神名などは、岩戸三神、岩戸三不動、牛頭天、土緑神、雲神、瀧大神、荒神、弁天、大黒天、弁天山観音、ガン取大神、三界神霊、不動三、表裏観音三。あまり深入りせずにメモを残したものだけだが。

写真8

参道の真ん中に、生卵が割れて落ちていた。どこかの供え物だったのだろう。

ようやく、新四国八十八箇所の石柱で参道が終わり、竹林の小径を通って道路に出た。緊張が解ける。ハイキングコースとして利用するには、雰囲気が重すぎた。

この十三仏について、朝日新聞滋賀県版の連載をまとめた「近江の山」には、「観音寺、箕作両山城の戦いや、元亀の戦いで死んだ人々、さらに日清、日露の戦死者を鎮魂する霊場である」と書かれている。(木村至宏・編、1988、京都書院)この十三仏周辺での人の思いの強さは、磐座祭祀の聖域である太郎坊宮と雰囲気が違って当然だろう。

紅滓山

写真9

貯水池の堰堤を左に見て歩けば草木が茂る紅滓山(べにかすやま)だが登る道があった。60m余りの標高差を一気に登る。

山頂に磐座があり、周辺の石柱を読めば、外廻山龍神(信者安体、内野安全)、外廻不動尊、金神、山神、台王三、亀水王、稲荷、天神、天狗、鳥大神、長寿夫婦岩神。「内野」はこの地域の地名だ。

紅滓山を下りて、万葉の森として整備された船岡山へ向かった。振り返る箕作山は、十三仏(岩戸山)付近の露岩が西日を受けて白い。船岡山を歩くうちに日が暮れた。歌碑などあるが、ここまで人手が入ってしまうと、あまり面白くもない。南端の阿賀神社に参詣して自動車を回収した。

行程表

11:55太郎坊宮前駅
13:36手水舎出発
13:50太郎坊山(13:50 - 14:02)
14:21箕作山
14:38小脇山
15:05十三仏(15:05 - 15:19)
16:18紅滓山(16:18 - 16:29)
17:01阿賀神社(駐車地)
(作成 2008.12.26、改訂/誤記訂正・書式変更等 2012.07.01)