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国立天文台

2023年8月30日、東京都三鷹市の国立天文台を見学に訪れた。昔々、天文少年をやっていた時代の憧れの場所だ。

国立天文台

中央線の武蔵境駅で小田急バスに乗車して国立天文台前で下車した。古めかしい正門にある守衛所で Visitor のシールを胸に貼り付けて、見学可能範囲が明記された場内地図で説明を受ける。

見学対象は敷地南側の幾つかの施設と生協売店・食堂などだ。50センチ公開望遠鏡と4D2Uドームシアターは予約や日付指定があるので、結局、役割を終えた歴史的な観測施設を巡ることになる。

写真5 第一赤道儀室写真6 太陽観測用20cm屈折赤道儀

第一赤道儀室へ向かう。1927年(昭和02)にカール・ツアイスから購入した太陽観測用20cm屈折赤道儀が役割を終えて静態展示されている。赤経軸の駆動は電力によらない重錘式とのこと。ギアから軸棒らしいものが伸びているが、見ただけでは駆動の仕組みは良く分からない。

写真7 太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)写真8 太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)

ヤブ蚊が気になる緑豊かな道を歩いて太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)の前に来た。内部へは入れない。太陽光をスリット経由で分光器に送り込む施設で、「太陽の重力によって、太陽光スペクトルの波長がわずかに長くなる現象(アインシュタイン効果)」の検出を目的としたが、検出できなかったと説明されている。

写真9 65cm屈折赤道儀写真10 65cm屈折赤道儀
写真11 65cm屈折赤道儀写真12 65cm屈折赤道儀・一階部分

天文台歴史館(大赤道儀室)の二階へ入った。観測室になっており、設置されているのは1929年(昭和04)のカール・ツアイス製65cm屈折赤道儀。主望遠鏡は口径65cm、焦点距離1021cn。観測利用は1997年に終了し、日本の天文学の記念碑的存在として静態保存されているとのこと。

一階へ下りると中央には白い望遠鏡架台の基礎があり、板張りの観測床が天井になる。地下室には、その観測床を回転させるためのモータがあるらしい。

写真13 レプソルド子午儀室写真14 レプソルド子午儀

展示室で海外に設置された観測装置のポスターなどを見てから子午儀資料館(レプソルド子午儀室)へ。建屋内に入れるが、レプソルド子午儀はアクリル板越しの対面になる。

この子午儀は1880年(明治13)のドイツ製。建屋は1925年(大正14)建設。「天文台が港区麻布にあった頃は、時刻の決定と経度測量に使用」され、三鷹へ移設後は天体の赤経測定に使用したとある。三角屋根は子午線方向に開閉する構造のようだ。

写真15 ゴーチェ子午儀室写真16 ゴーチェ子午儀

続いて西隣のゴーチェ子午儀室へ。こちらもアクリル板越しの対面だが、ゴチャゴチャしていて魅力的に感じられる。こちらは1903年(明治36)のフランス製。建屋は1924年(大正13)建設。1982年(昭和57)に新しくできた自動光電子午環と交代したが、その後しばらくクェーサーなど微光天体の精密位置測定に利用されたとのこと。

写真17 自動光電子午環写真18 6mミリ波電波望遠鏡

西に少し離れて天文機器資料館がある。自動光電子午環が設置されているが、観測衛星に代わられてお役御免とのこと。屋外では1970年(昭和45)完成の電波望遠鏡が役割を終えて展示されている。

新しい観測機器はパネル展示で見られるだけだ。幾つかの観測機器は好条件を求めて、国際協力により海外に設置されるようになった。天文少年をしていた半世紀以上前の憧れの現役機器や、まだ存在さえしていなかった機器が既にスクラップ同然に置かれていた。ポンコツ爺さんにはぴったりの見学場所かも知れない。

(作成 2023.09.02)